判断能力が衰える前にする「最善の選択」とは?
答え
親族以外の第三者が後見人に選任される可能性がある法定後見制度(判断能力低下後)ではなく、
「任意後見」と「家族信託」を組み合わせる契約をし、遺言もあわせて公正証書にする方法です。
これは、それぞれのデメリットを補うものだからです。
※但し「任意後見」も「家族信託」も「遺言」も、本人の判断能力が衰える前に契約、作成することが必要です。
「財産管理を家族信託」で、「身上監護を任意後見」で補うことができ、現在、ベターな対策と考えられるからです。
※遺言は、「信託契約」以外の財産を指定するためのもの。
家族信託は、お金の出し入れなど認知症発症後でもよく、本人の健康状態に左右されることのない制度です。
※家族信託は、「信託契約書」を作成して行いますが、家族全員が納得していることが前提です。
※さらに受託者(例えばこども)が認知症になっても、第二受託者を信託契約で決めることができる大きなメリットがあります。
「相続させる」と「遺贈する」は同じ?
答え
違います。
「相続させる」は、相続人に対して「遺言」や「遺産分割協議」で遺産を譲渡することです。
相続人に相続の場合は、必ず「〇〇に相続させる」という言葉を使います。
それに対して、「遺贈する」は、相続人や相続人以外の誰かに「遺言」で遺産を無償譲渡することです。
遺贈の場合は、必ず「〇〇に遺贈する」という言葉を使います。
例えば、被相続人の孫Aに遺言で贈与=遺贈するときは、「A(×年×月×日生まれ)に遺贈する」となります。
受遺者の生年月日を必ず記載するのは、孫Aを特定するためです。相続の時も同様に生年月日を必ず記載します。
任意後見制度と法定後見制度の違いとは?
任意後見制度と法定後見制度の違いですが、「任意後見」とは本人の判断能力が衰える前に契約(公正証書による)し、判断能力が衰えた後に後見契約の効力を発動させて後見を開始する制度です。
それに対して「法定後見」とは、判断能力が不十分な方に適用される保護制度です。申立て人が家庭裁判所に「法定後見」の審判の申立てを行い、家庭裁判所の審判が確定されることで保護が開始される制度です。
「法定後見人」及び「法定後見監督人」は、家庭裁判所が選任、指定します(家族などの希望に沿わないことが多く、弁護士や司法書士が選任されることが多いです)。
それに対して「任意後見人」の選任では本人の意思が反映されます。「任意後見監督人」は任意後見人を監督する人のことで、実際に任意後見契約が開始されるときに申立てを行い、選任されることになります。ここに両制度の大きな違いがあります。
家族信託の30年ルールとは?
・家族信託では、二次相続や三次相続まで想定して信託期間の指定ができる「受益者連続型信託」が存在します。
・ただ家族信託は信託契約が設定された時から30年を経過すると、その後に利益を利益を受け取る人が死亡すると、そこで終了となります。
・つまり、この場合、「利益を受け取る権利」を引き継ぐことはできません。
・例えば、①最初に受け継ぐ人、②2番目に受け継ぐ人、③3番目に受け継ぐ人(30年経過している)がいるとして、③の人が亡くなると次の④4番目の人は「利益を受け取る権利」を引き継ぐことはできないということです。
「家族信託」のデメリットは?
・認知症になった後では信託契約を結ぶことはできません。
・公正証書での作成が必要です(費用が発生します)。
・金銭を管理する「信託口口座」を開設できる銀行が、全国でも限られています。(入金する資産は、最低でも3,000万円が基本)
・家族信託は、財産管理はできても身の回りの手続(例えば、介護施設との契約、病院、役所への届出、申請など)はカバーできません。
・信頼のおける受託者(子、甥、姪、兄弟など)が必要で、その方に財産管理を任せ、預けることになります。
・FACEBOOKでも述べましたが、各種税金が課税されるうえ、税務申告に手間がかかります。翌年1月末までに税務署に信託計算書と合計表の提出が必要となります。
・法定後見制度に比べて初期費用が高額となります。
遺産価額が5,000万円~6,000万円で約100万円程度かかります(法定後見制度は、10万円程度+後見監督人費用)。
・両親他その他の兄弟姉妹を含めた家族全員の同意が必要です。
・家族信託を利用して預ける財産に制限があります(農地などは地目変更の手続が必要)。
・平成19年に施行された新しい制度なので、相談する専門家がまだ少ないのが現状です。